あらかたひとりのブログ

のんびりひとり暮らししています。

肩の上のオウム

星新一をご存じでしょうか。そして彼の書いた「肩の上の秘書」というショートストーリーをご存じでしょうか。

 

うろ覚えでそのストーリーを紹介させて頂きますが、さてその話の中で人々はみなオウムを肩に乗せて生活をしており、そのオウムは飼い主が呟いた直接的な言葉を「翻訳」し、社会的に正しく流暢な表現で喋ることになっています。人々は清く正しい会話をしていますが、これはオウムを介してのことで、その本心はどうなのか、といったほの暗い読後感があったように記憶しています。いや本当かどうか忘れてしまったので、気になる人はぜひ読んでもらいたいと思います。

 

さて我々がこの度開発した商品は、このようなほの暗さを感じさせない、社会上きわめて有用な商品でございます。

 

ご存じの通り、感染症を避けるためにはマスクがある程度有効です。しかしマスクがあると喋りづらいし声も通りにくい。そこでオウムなのです。

 

認知神経科学の権威であるエヌ氏は、人がしゃべっている際の神経系の活動を、その最先端のニューロイメージング技術により自然な話し言葉に変換する実証実験に成功しました。残念ながら非侵襲的手段ではないため電極を頭にぶっ刺さなければいけないのですが、脳の特定の場所に電極をさすことで脳が活性化することを、近所の鍼師のケイ氏が指摘しているため問題はないと明言させていただきます。

 

さてあなたが脳に電極を刺し、この商品、機械のオウムを肩に乗せれば、あなたが喋ろうとしたことがそのままオウムの口から音声として表出されるのです。いえいえ、心の中に留めたいと思っていることは表出されませんので、その点はご安心ください。あなたがマスクをしていても何の問題もなくなる、というわけです。

 

さらなる改善として、すでに我々は「食べる」ことのリスクも解消する用意がございます。感染症にとどまらず、食中毒も避けるため、人口的水分・栄養補給法を応用してオウムに食べ物を食べてもらい、その抽出された栄養分と水分を人体に取り込むという計画です。この計画については、オウムが食べた味覚や触感を人の脳にフィードバックする研究が、日進月歩で進んでいると指摘するにとどめておきます。

 

さらにこれだけにとどまらず、このオウムの体表面はフレキシブル有機ELを応用して発色しているため、シーンによって体の色を変えることができるのです。単なる機械的な、機能だけを実現しようという冷たさを脱していることも、このオウムの誇れる点です。医療従事者であれば白いオウムが合うでしょうし、就職活動の際はスーツに合わせてシックにきめることもできるのです。就職が決まればその会社の広告塔にもなるわけで、例えば1時間に一度、会社の商品を大音響で宣伝したり、あるいはオウムの喋る時間を切り売りして、広告宣伝費を少額ながら稼ぐこともできるのです。

 

私の肩に乗っているオウムも、素晴らしい毛色と毛並みではないでしょうか?

 

食事をする様、物事を語る様、愛らしく首を振る様。肩に乗せている人間より生き生きと、まるで生きているように感じませんか。さああなたもおひとついかがでしょうか?