健康な生活
「07:00 起床です」
「バイタルデータチェック開始」
……
体温:36.5℃
心拍数:81/分
心電計:正常
呼吸数:17/分
血圧:106/66mmHg
……
血中酸素飽和度:98%
血中アルコール濃度:0.00%
総蛋白:6.7g/dl
総ビリルビン:0.8mg/dl
アルブミン:4.0g/dl
A/G:1.7
AST:14U/l
ALT:11U/l
γGTP:12U/l
ALP:44U/l
LDH:130U/l
クレアチニン:0.75mg/dl
e-GFR:91.1ml/分/1.73
尿素窒素:9.6mg/dl
尿酸:6.0mg/dl
アミラーゼ:51U/l
CRP:0.06mg/dl
総コレステロール:153mg/dl
中性脂肪:50mg/dl
HDL:63mg/dl
LDL:75mg/dl
血糖:91mg/dl
HbA1c:5.0%
赤血球:451万/μl
白血球:3600/μl
ヘモグロビン:13.4g/dl
ヘマトクリット:41.1%
MCV:90.9fl
MCH:29.9pg
MCHC:32.3%
血小板数:29.0万/μl
……
「バイタルデータチェック完了」
完了して結果はどうだったんだろうと思うことから始まる。
バイタルデータチェックの間は体を動かすことができないので、この30分は二度寝しないように注意しながら覚醒を保たなければならない…… より確実な結果を得るためにはこうしなければならないとか。動くたびに安静を促され、改めて最初からチェックを開始されてしまうのであきらめている。
「07:30 メンタルチェック開始、連想するものを思い浮かべてください」
「健康」
健康は大事だ。
その昔、年に1回の定期健康診断があったようだが、ウェアラブルデバイスの普及により毎日チェックできるようになったという。1年に1回? それでどうやってフィードバックを受けて調整すればよいのだろう? 健康な生活を送ることは権利であり、国はその増進に努めなければならない。
「安心」
この言葉は声高に叫ばれていたようだが、実態は伴っていなかった。
何でもその昔、メンタルチェックは気分がいいか悪いかを自ら選ぶ形式だったという。私は健康です、心理的に安定しています、犯罪も起こしませんと? もし自分のことをよくわかっていたら、「汝自身を知れ」などと言えたものではなかったのではないか?
「管理」
さらに言えば、バイタルチェックとメンタルチェックを通過していなくても外出ができたという…… チェックを通過せず外出できた場合、本人はもちろん周りの人間の安心も脅かされかねないのだ。 ……もちろんメタバース上の関わりだけなので物理的な危害は加えられないが、物理的かどうかは精神上まったく関係がないのだ。すべては安心のため。
そう、脳波を測定しAIで解析することで心理的安定性や犯罪的思考傾向もわかるようになった。いわゆる「擬陽性」となる可能性も高いらしいが、安全側に振れているのであれば問題ない。チェックに3時間かかるのもまた安全のためだ。そういえばあればどれくらい前だったろうか? 映画に出てきた「不安」というセリフをふと思い浮かべてしまい再チェックとなってしまったのは?
あ