ペストとコレラ
カミュの「ペスト」が累計100万部突破、らしい。
「ペスト」の話題が出ることで畢竟、筒井康隆の「コレラ」の話もでるだろう。
筒井康隆は好きなのだが、一番好きなのは「虚構船団」だったりする。この本の第一章は、文房具の船員たちの日常を紹介しているだけなのだが、何しろ出だしがこれである。
まずコンパスが登場する。彼は気がくるっていた。針のつけ根がゆるんでいたので完全な円は描けなかったが自分ではそれを完全な円だと信じこんでいた。彼は両脚を屈伸できる中コンパスである。しかし彼が実際に両脚を屈伸させる場合は極めて少い。いつも脚を伸ばしたままだ。その為には大コンパスがいるではないかというのが彼の理屈だったのだろう。誰かが聞いたわけではないにかかわらず誰もがコンパスのその理屈を悟っていた。何が悲しくて自分がそのように猥褻とも言える恰好をしなくてはならないのかとコンパスは思っているのであろうと皆が信じていた。
概ねこの調子で文庫本168ページに至るのだ。
本書とは関係ないかもしれないが、筒井節というか何というか、独特な台詞使いが何とも言えない。
「どひゃ」とか「わははは」「うけけけ」とか、なかなか見ないんだけど、わかる人いるかなあ。