あらかたひとりのブログ

のんびりひとり暮らししています。

金の斧

ある日、きこりが斧を川に落としてしまい、拾い上げることもできず嘆いていた。するとヘルメスが現れて川に潜り、金の斧を拾ってきてきこりにこう尋ねた。「お前が落としたのはこの金の斧か?」

 

きこりは考えた:

 

A)

彼はヘルメスである。私が落とした斧が何か、認識していない。

B)

彼はヘルメスである。私が落とした斧が何か、認識していて試している。

C)

彼はヘルメスに見えるが、人間である。

 

A、Bの場合は気まぐれな神の思うところにしかならないが、Cの場合は、突然川に潜り、きこりが持っていそうもない金の斧をお前のものかなどと聞いてくる、いかにも怪しげな若者だ。優男ではあるが、私が潜れもしない川に躊躇せず潜りかつかなりの重さがあろう金の斧を振り上げている。

 

きこりはどの選択肢が正しいのかわからなかったが、その手から斧を渡されることにためらいを感じ、それは違うと答えた。

 

するとヘルメスは今度は銀の斧を拾ってきたが、きこりはためらいながらも、さっきより申し訳なさそうに、それも違うと答えた。ヘルメスの顔を伺う。その表情は判らない。きこりは何か言葉を継ごうとしたが、その前にヘルメスは再び川に潜り、今度は鉄の斧を拾ってくると再びきこりに尋ねた。きこりは斧をよく見た上で、確かに私が先ほどまで持っていた斧に見える、と観念したように答えた。

 

ヘルメスはきこりの正直さに感心して、三本の斧すべてをきこりに与えた。