アリとキリギリス
煌々と輝く太陽を背に受け、アリたちは今日も働いている。
季節は夏、海は見えなくても、時々そよぐ風がその存在を伝えてくる。
冬はまだ遠いけれど、アリたちは食料をその日に備えるために働き続ける。
風に陽気な音が混じる。
キリギリスが弾くバイオリンの音色だ。
アリたちは疲れた体を休め、しばし耳をそばだてる。それほど興味を示さないアリもいれば、是非この手にした食料を渡しもう一曲弾いてもらおうというアリもいる。
キリギリスも霞を食べて過ごすのではない。食料を渡されればご満悦、そのアリの期待に沿って、それもう一曲と弓を掲げる。夕闇が迫り、アリの姿がその闇に溶けてしまうと、今日はお開きとなった。
季節は過ぎ、冬が来る。
冷たく光る太陽を背に受け、アリたちは今日も働いている。
時に吹きすさぶ風の冷たさに手足をさすりながら、水の冷たさに驚かないように注意しながら。
バイオリンの音は聞こえない。
そう、こんな霜付く草原に立たなくても、洞穴の中で一曲奏でれば、アリたちが食料を持ってきてくれるのだ。キリギリスは食料を得ることができ、アリは文化的に豊かになる。ああ、素晴らしきかな。