今日における人類学という言葉では齟齬があるかもしれないが、古代ギリシアにおける人あるいは社会のアイデンティティや歴史に関する思想は存在した。
古代ギリシア人は古代ギリシア語を話せない話者をバーバリアンと呼び、また古代エジプト人の習慣を自らと比べるなどして自らを他と比べていた。
またホメロスやヘシオドスの伝統によると、人間社会は「黄金時代」から時を経て衰退しているとされたが、一方で人間の弱さが技術や社会制度をもたらし、人々は進歩しているという思想もまた存在した。後者の、人間社会は改善されるという考えはプラトンやエピクロス派などに共有されていた。