哲学者カント(3)
俺の名は不動一者。
謎の男にサロンに連れられ巻き毛になってしまったが、髪の毛がどうなろうと哲学はできる。
今日は休日、人もまばらなカフェでお茶を片手に外を見ていると、隣の席の、黒ずくめの男たちの会話が耳に入ってくる。 ……んん? 今ちらっとだが聞こえたのは「始末」という言葉じゃあないか? これは事件の香りがするぜ!!!
……
まてよ、なぜ俺は「始末」という言葉を聞いて事件性を感じたのだろう?
始末…… 確かに「ヤツを始末しろ」といった文脈で使われた際は命を奪うという意味で使われているように思える。ドラマや映画ではそういった物語になっている。ただ、火の始末、といった言葉もある。これも火が燃え残らないようにその「命」を奪うという意味はあるが、乾燥した時期には特に重要なことだし事件性はない。火事にあったことがある人、あるいは身の回りで火事があったりすれば自然と出る言葉だ。
なぜ俺は事件性があると感じた?
黒ずくめの男が怪しかった…… ヤツらは火の始末など気にしそうになかった…… いやこれは偏見ではないか? 黒人がポケットから免許証を出そうとしたら、銃を取り出そうとしていると勘違いされて射殺された事件をどこかで聞いたことがある…… 俺はそれと同じことを? 怪しいと思ったから日常的な行為が事件性のある行為に見えたのでは?
まてよ…… 始末、しまつ、シマツ、shimatsu……
始末書、あとしまつ、ジュウシマツ、島津…… いくらでもあるぞ…… 考えてみると単なる発音でしかない。なぜこの単なる発音が、発声が、音が、さまざまに解釈されるのだ…… は、そして海外では通じないのだ!
この事件、まだまだ隠された謎がありそうだぜ!!!
(♬~)