哲学者カント(2)
俺の名は不動一者。
謎の男にサロンに連れられ巻き毛になってしまったが、髪の毛がどうなろうと哲学はできる。
今日は休日、人もまばらなカフェでお茶を片手にふと外を見ると、黒ずくめの男たちが白い粉の入った小さな袋を手渡ししている。これは事件の香りがするぜ!!!
……
まてよ、俺はなぜそのように認識したのだろうか。
光が俺の目に入り像を結んだことは理解できる。
ただ例えばデジタルカメラで撮った画像をパソコンに保存したところで、パソコン自身はそこに意味は見て取れないだろう。
では俺はなぜ認識できた?
いや、待てよ。「光が俺の目に入り像を結んだ」?
これはいったい何を言っているのだろう。根拠はあるのだろうか。
目をつぶっていても光を感じるし、夢でも光を感じることができる。では今見ているこの光景は夢ではないのか?
黒ずくめの男たちの姿はすでにそこにない。
先ほど見たと俺が認識したものは実際に存在したのだろうか。信じられるだろうか。白い袋、黒ずくめの男、お茶、信じられるもの……
そうか、わかったぞ!
信じられるのは己自身、信じられるかと疑っている俺自身は信じざるをえない!!!
わかっちまったぜ、この事件の謎が!!!!!
(♬~)
Children 子供
古代ギリシアでは、子供を育てるかどうかは父親によっていた。ただしスパルタではその決定権は「部族の長老」にゆだねられていた。(一方、古代ローマでは男児全てと長女は育てるように求められていた)
健康な男児に比べ、女児や非嫡出子、先天的に障害を持っている子供はリスクが高かったとされている。アテナイではおそらく生後5日目、アンフィドロミアという儀式にて、子供が家族の一員になったとされる。その後まもなく、男児はフラトリアという団体に登録された。男児も女児も、6歳くらいまではほとんどを家庭内の女性部屋で過ごした。スパルタではこの歳になると家を出て、アゴーゲと呼ばれる教育制度に入ることになる。男子についてはこのような制度のもと成人の儀式が執り行われたが、女子については確かなことはわからない。アテナイではアルクテリアという儀式がそれにあたるとも言われている。
乳児死亡率が高いことから、古代における親の子への愛情なるものが推測されてきた。文学や養子縁組の流行にみられる子供を持つことに対する強い願望は、老齢になった親は子が養うものという現実を反映していると思われる。子供は知能的に劣ったものと考えられており体罰は頻繁だったようだが、一方純粋さのために儀式においては重要な役割を果たした。
3年前
「そういえば俺さ、ポン酢が好きなんだよ」
いつものから揚げ定食を前にして、同僚が突然しゃべりだした。
コロナ禍でしばらく途切れることもあったが、昼食は職場の近くの定食屋で食べることが多い。この定食屋には週に一回は通っており、から揚げ定食か日替わり定食か、そのどちらかを飽きもせず注文し続けているのだ。
「はい、から揚げ定食お持ちしました~」
から揚げ定食が運ばれてきてテーブルに並べられる。白米と、ワカメと豆腐の味噌汁、大皿にはから揚げがキャベツの千切りを従えて並んでいて、小皿にはひじきが盛られている。そしてもう一つの小皿。こちらにはマヨネーズが入っている。
「前言ってたよな、お前? マヨネーズが好きだ、から揚げにはマヨネーズだ、マヨネーズの原料が卵なんだから鶏肉と合う、衣の味付けが甘じょっぱいからポン酢だと辛すぎるだの何だの、さり気にポン酢ディスしてたけどさあ……」
「いや、から揚げ定食頼むときはいつもマヨネーズ選ぶけど、原料が卵とかそんなん言ったことあったっけ? というかポン酢選んでる印象ないなあ…… いつも二人ともマヨネーズ頼んでない?」
この店ではから揚げ定食を頼むとき、調味料としてマヨネーズかポン酢を選ぶことができるのだ。コロナが流行する前からマヨネーズを選び続けた記憶しかないし、味についてはいつもテキトーなことしか言った覚えがない。
「いや前言ってたよ、3年前。まあこの3年間俺もマヨネーズを頼んでいるけどさ、実際、本当のところ、ポン酢が好きなんだよ。というか、ポン酢が衣の味付けとかぶるとかディスられてちょっと癪にさわったというかさ、それなくない?っていうかさ」
3年前? ポン酢ディス? 腹が減りすぎたのか?
「そうだったっけ? 本当はピリ辛のタレがあるといいんだけどな。マヨネーズも悪くないけどさっぱりしないし、やっぱ辛いのが好きなんだよ」
「いやまあ俺もピリ辛好きだけどな」
……これは3年後にマヨネーズをディスったと言いがかりを付けられそうだ。
無からの創造、無限ループ
最近、某サイトの会員資格が消された。
オンラインで映画を観ることができたり、年に何回かあるセール時には商品の値引きがあるような、そんなサイトの会員資格だ。メールで資格情報に関する注意事項が来ていたような覚えがあるが、放置していたら消されたようだ。
いや、まだ残っているのかもしれない。ここ最近メールで毎日、決まった時刻になると決まったように会員資格が消されるという通知が届く。中身を読んでいないので内容は不明だが、まだメールが届くということはまだ会員資格は消されていないのかもしれない。何せ、一度も登録したことのない会員資格なのだからよくわからない。
無からの創造、無限ループというと物語の中だけで発現する事象だと思っていたが、この広いネット上では当たり前のように繰り返されているのかもしれない。
Childbirth 出産
出産は一般に女性、つまり家族や隣人あるいは経験ある助産婦が関わるもので、男性の医師は困難な場合のみ呼ばれることが想定されていた。
ヒポクラテスの論文には出産について議論があり、陣痛の始まりは胎児の運動によるものでそれにより膜が破れるためとか、分娩が長引いて上手くいかない場合は死産や多胎になるとか記載があった。出産を促すために激しく揺さぶったり陣痛を早める薬物も提案されており、それでもうまくいかなければ医師は器具を使って胎児を取り出すこともあったようだ。子宮は筋肉というより容器と想定されていた。アリストテレスは痛みが下腹部だけでなく腿や腰にも起こりうること、そして女性は努力と正しい呼吸によってうまく分娩できると記している。また紀元前3世紀、ヘロフィルスは解剖により子宮が筋肉であることを明らかにし、のちにガレノスはそれが胎児を排出する力を持っていると論じた。
古代ギリシアでは伝統的に、出産は血が流れるという理由で穢れになると思われており、そのため聖域での出産は禁じられていた。またオリンポスの女神が出産するような表現はないが、最も祈られたのはアルテミス・エイレイシア
あるいはヘラであった。
Character 性格
人のふるまいや心理的構造のパターンを認識しようするときに使われる非専門用語。
古代における考えが読み取れるのはアリストテレスが残したものがほとんどであり、その中には、古代末期に四体液説へと発展する医学的考察が含まれている。アリストテレスにおいては徳と不徳を分析することが重要とされている。彼のモデルでは、人間は生まれつき比較的安定した感情や欲望を発達させ、それらが人々にそのエトスを示す行動を選択させる基盤となる。
アリストテレスにも傾向はあるが、他の古代の哲学者は、徳のある者だけが真の安定に至り、徳のない者は不合理で流動的な欲望あるいは情動に支配されるといった考えを強調した。
ちなみに、古代の世界においては近代西欧的な個性や主観性への関心が抜け落ちている。その世界「イーリアス」以降の文学で顕著なのは、異常であったり問題であったりする精神状態や倫理観について同情的であるということである。